2016年9月30日金曜日

出版社の危機は取次ぎ制度の崩壊、もしくは再販の廃止で本格化する


昔、出版社に籍があったことがあり、
会社がやっている事業ということで、
その仕組はある程度頭に入れてある。


それで、なんでその仕事から離れたというと、
世の中にあまたある出版社は、
現状維持するのがやっとで、
大きな動きがあったらバタバタと潰れていくのではないか、
と思ったからだ。


出版が今まで業界として生き残って来れたのは、
取次という流通制度と
再販制という保護制度があったからだ。


取次というのは、
出版業界外から見ると、
問屋みたいなものかと思われるが、
実際はそんなことはなく、
出版社、書店にも大きな影響力を持っている。


出版社が新刊本を出版すると、
取次への納品部数分の代金を払ってくれる。
(その代わり、返品があるとその分は出版社から取次へ返金する)


そして出版社は、
返品が来る前に新刊の出荷で得たお金で
次の新刊にとりかかり、矢継ぎ早に出版する。


これは、取次が出版・書店の
金融機関としての役割を持っているからできる。
しかし、返品が多くなれば、
手元に金庫にお金があるように見えても、
ちょっと先にある支払いの山に対応できずに、
不渡りを出してしまう可能性もある。
これを避けるために、次から次へと新刊本を出している会社がある。
つまりは、出費より先に入金を作るために
自転車操業状態になり、
なおかつ、粗製濫造にもなっているのだ。
そのような状況で、取次が潰れると、
一気に首が回らなくなる出版社が多い。
去年、比較的大きな取次がそうなってしまい、
出版社だけでなく書店でも
その余波での倒産があった。
取次という仕組みが崩れると、
業界全体としてそうなってしまうのだろうと予想している。


そして、再販制である。
再販制は、どこのお店でも同じ商品ならば
同じ値段で売らないとダメよって縛りで、
書籍やCDなんかが該当している。
そのおかげで、どんなに売れない本であろうと、
値引きされずに定価のままで売ることができている。
この再販制がなくなってしまうと、
一般向きでない本は、在庫一掃などの際に
大幅に値引きされて売られてしまう。
そういう前提になると、取次経由で本屋に卸される時の
卸値が大きく値引きされる可能性がある。


今は、取次も機能し、
再販制もあるので、杞憂であるが、
これらがなくなったら、大手出版社ですら継続できるかあやしいと考えている。


現に、一部の本では取次を経由せずに書店に並ぶ本も出ているし、
何よりAmazonであれば、取次を経由しないでの出版も可能だ。
(書籍の形態をした雑貨扱いになるけれども)
再販制はTPPとかで問題視されれば、
あっけなくなくなるんじゃないかと考えている。


このどちらかが消えてしまうと
途端に途方に暮れる出版社は多い。
その時が来るまでのんびり出版社での仕事をしててもいいが、
たぶん嵐が来るのであろうと思っているのであれば、
そこから逃げておくのも手だ。
出版社での仕事は、IT系の会社とは
企業文化がまるっきり違っていて
大変面白い経験であったが、
そのうち沈む船であるとも考えていたので、
ひっそりと違う陸地に移ったという感じだ。